おばけマンション
この季節、階段と廊下に仰向けになって蝉が待っている。
もう逝ったもんだと通りぬけると「ジジジジジジ!!!!」いきなり鳴き出したり
バタバタしたりで、お互い半狂乱になる。
仰向けでいるからといって死んだ訳ではないということを知ってからは
どこかおばけ屋敷みたいだなと思って暮らしている。
穏やかに言ったが本当はびっくりさせられてイライラしている。
そのうち、逝ったかどうかを見極められるようになった
足が閉じていると逝っていて 開いていればまだ生きているのだ。
開いていれば部屋から箒を持ち出し入魂してやり
再び自分の力で外の世界へ旅立たせてやっている
これは他住民のためにもなっていると自負心。
蝉の命は短いみたいだけど
そこに同情したからといって驚かないわけにはいかないのである。
嫌なものは嫌。夏
2016.8.2